就職・展示会イベントにおけるDX
目次
未だにアナログな、対面でのイベントの現状
2019年に始まった新型コロナウィルスによるパンデミックは、社会の在り方に様々な変革をもたらす結果となりました。
過度な接触を避けるために様々な業務のオンライン化が進み、今までは当たり前だった対面業務が次々とITを使ったものに塗り替えられていきました。効率化の波はイベント業界にも押し寄せ、Zoomなどを取り入れたハイブリッドなイベントの形態も生まれつつあります。
とは言え、それだけでは物足りない。そう考える人も決して少なくはありません。新型コロナウィルス感染症の5類への引き下げを歓迎する声が多いのはその証左であり、今年に入ってから徐々に社会全体がポストコロナへと動き出しつつあるのを感じます。
ただし、イベント業界の方は、思ったほど効率化が進んでいないのが現状です。
人が動かないときにはあまり意識されなかったこの問題も、人の流れが戻るにつれ、大きくピックアップされつつあります。対面型のイベントでは、未だにアナログな作業が大きなウェイトを占めており、まだまだ手続きが煩雑な部分が多いのです。特に現地に来てからの対応には人が欠かせません。にもかかわらず、単純作業ですらIT化が進んでいない為、参加者も、スタッフも不要なストレスにさらされているのが実情なのです。
弊社は設立以来、「関ケ原ファンクラブ」や「中山道17宿歩き旅」、「シャインカービングアカデミー様のファンサイト」など、観光協会様や地元の企業様と、様々な対面業務の効率化を手掛けてまいりました。
まだまだこの分野はやるべきことが多く、引き続き、ITを使った地上戦を色々と仕掛けています。
今回から、現在、弊社の手掛けているイベントのDXのかたちをいくつかピックアップして紹介いたします。
オンラインのイベントだけでなくオフラインのイベントも、QRコードやバーコード、そしてスマホを使えば、それほど手間とコストをかけずにに簡単に効率化できるのです。
就職イベントにおけるQRコードの活用
まず最初に紹介するのは就職・展示会イベントでのDXの事例です。去年から、岐阜県及び岐阜新聞様主催の就職イベントのDXをいくつか手掛けさせていただいており、この記事を投稿している現在、3つ目で今までで最大級のものが開催されています。
https://gifush.pref.gifu.lg.jp/gifu-syukatsu-adventure/
大変好評で、3月にはこの仕組みを使ってもうひとつ就職イベントが開催される予定です。
この仕組みの特徴をいくつか挙げさせてもらいますと
①オンラインで事前登録
②受付には自動発行されたQRコード(もしくはバーコード)を利用
③企業との情報交換もQRコードで
④アンケートもマイページから
の4つがあり、それぞれ、アプリや高価な機材も必要なく、QRコードとスマホだけで現地での業務を効率化できる点にあります。順に説明していきましょう。
複写式の紙からスマホで事前登録制に
最近は、アプリやスマホで事前登録制のイベントも増えてきました。スマホが普及し、手元から簡単に情報の送受信が行える環境が整った為、起こるべくして起こった変革ではありますが、こと就職イベントや、展示会にに関しては、未だに複写式の紙で来場者に情報を記入させていることも珍しくはありません。
複写式の紙の問題点を述べさせていただくと
①来場してからの記入になる為、記入場所で密集が起きる
②5枚綴りのものなどになると、最後のものがかすれてしまう事も多い
③受け取った側もデータ化するためには、改めてシステムなどに転記が必要
④枚数以上を訪問する場合は、改めて用紙を記入しなおす必要がある。
その他、「字が汚い人などは、書く行為そのものが苦痛になる」と言った意見もありました。最近は字をあまり書かなくなったため、こういうことに苦痛を感じる人も、意外と多くなってきているのではないでしょうか?
今では誰もがスマホを一つは持っている為、様々な作業をスマホに集約することは現実的な解答と言えるでしょう。
受付には自動発行されたバーコードを利用
勿論、単なる事前登録だけではありません。受付業務も簡略化できます。
以下が現地で実際に受付を行っている様子になります。
ご覧のように、事前にマイページに発行されたバーコード、もしくはQRコードを読み取って受付を行っています。この例はバーコードですので、バーコードリーダーが必要ですが、QRコードにするとタブレットやスマホさえあれば簡単に行えます。
読み取るだけで受付が終了する為、受付業務の簡略化に繋がりますし、誰が何時ごろに受付を行ったのかなど瞬時にデータとして残りますので、個別にカウントする必要も、来場者の情報を転記する必要もありません。
また内容はスタッフが読み取った時のみ有効ですので、読み取られても個人情報がなどが漏洩するわけでもありません。バーコードなどに記載されているのは意味のないランダムな文字列だけです。
実はこの仕組み、岐阜県が実施した「コロナ社会対応ITサービス開発事業」に採択されたものと同様の仕組みで構築されています。(詳しくはこちらをご覧下さい)
この事業自体も、かけはしメモリーの仕組みの一部を利用して作られていますので全て姉妹品です。
このようにQRコードやバーコード、NFCなどを使えば、一時的なイベントでも十分な手続きの効率化が行えるのです。
企業との情報交換もQRコードで
複写式の紙を事前登録に変えましたが、勿論登録しただけでは意味がありません。紙は来場者と企業が情報交換を行うツールにもなりますので、双方に情報の受け渡しが必要です。
これもまたQRコードを介して行うことが可能です。
以下が現地での様子になります。(※写真に写っているのは協力会社のスタッフです。協力会社様に確認の上公開しております)
ご覧のように、出展企業様のブースにはQRコードが置かれており、来場者はこのQRコードを読み取って面談を行います。
QRコードを読み取ると、来場者のマイページには、出展者のページへのリンク、出展者側には、来場者の登録情報が提示され、出展者は面談を行いながら、デジタルの面談シートに内容を記入していく(もしくは面談後に入力する)ことになります。
出展者側のカルテ画面
つまり、自主的にQRコードを読み取ったことでマッチングが行われ、相互に情報を交換し合うことが出来るのです。来場者は、何度も紙を書き直す必要もありませんし、出展者側は面談内容を後でCSVでダウンロードできますので、改めて転記する必要もありません。そのまま社内で共有できます。
個人情報を渡すか渡さないかは、カテゴリによって設定できる(例)高校生は不可)など、きめ細かい設定もできるようになっており、個人情報の取り扱いの難しい学生などの面談にも対応できるようになっています。
企業側のページから、資料もページからダウンロードさせることも可能なので、パンフレットや資料も手渡しする必要もありません。来場者はスマホだけ持って面談を行い、手ぶらで帰ることも出来るのです。
アンケートもスマホから
展示会や、就職展では帰り際にアンケートの提出を求められることもあります。これもスマホから行えます。QRコードを読み取ってアンケートを行っても良いのですが、この仕組みでは、受付を行うと自動的にマイページにアンケート回答のボタンが出てきてアンケートに回答することが出来るようになっています。
その場でアンケートを記入せずとも家に帰ってからゆっくりとアンケートに回答していただければよいのです。
主催者側は管理画面よりアンケート結果をCSVでダウンロードすることが出来ます。紙を転記して集計する必要もありません。媒体を紙からデジタルに変えたことでこのようなメリットが享受できるのです。
リアルタイムで集計
紙からスマホに媒体を変えたことのメリットはそれだけにとどまりません。
受付数、アンケート回答数、企業の訪問数などのデータはリアルタイムで集計され、主催者側に集まってきます。今まで手作業で行っていた単純作業がQRコードを介してデータ化され、ものの数秒で終了してしまうのが情報技術の良いところです。
このように、申込から受付、アンケートから集計まで全ての仕組みが、大きな設備やアプリを作る必要もなく、QRコードやバーコードだけで構築可能です。
QRコードを利用した対面業務の組み合わせ
かけはしBizの紹介記事では、コンテンツをパズルのように組み合わせてページを作る方法を紹介しました。作られたページをQRコードに集約しカード化したり、シェアしたりするのがかけはしメモリーの特徴ですが、組み合わせることが出来るのは何もコンテンツだけとは限りません。
受付けや、面談による相互情報交換、アンケートなど、様々なモジュールを組み合わせてサービスを構築可能であり、今回のイベントも、かけはしメモリーのフレームワーク内での組み合わせで構築されています。
また、このモジュールもいくらでも拡張可能です。
QRコードを使って情報を読み取る作業も、QRコードを使って受け付ける作業も、「QRコードを読み取る」という行為そのものは変わりません。
かけはしメモリーは、対象と、行為を入れ替えることによって「QRコードを読み取る」という行為に様々な意味を与え、モジュール化しています。かけはしメモリーの特徴である「記録用QR」もこのフレームワークの中の一つの在り方であり、かけはしメモリーの神髄は、この柔軟な構造にあると言っても過言ではありません。
かけはしメモリーの仕組みについては、こちらの講演でざっくりと述べさせていただきました。ご興味のある方は是非ご覧ください。
効率化から楽しさへ
最近は猫も杓子もAIという状況ですが、まだまだ人間にしかできないことも多く存在します。
特に観光や地域のイベントは、来訪者を楽しませてこそ成り立つものです。それ故、まだまだこの分野は属人性の高い領域であり、システム化の難しい領域でもあります。システム会社が頭で考えているだけでは思いもつかない問題に直面することも多くあれば、逆に、システム化の際には、イベント会社様では考えなかった問題に直面することもあり、暫くはこれらの問題を統合しつつ少しずつ現実的なものにしていく作業が必要になってくるでしょう。一歩一歩前進していくしかありません。
今回の例では、イベントでの対面業務の効率化と言う観点からイベントのDXを述べさせていただきました。主に来場者とイベントスタッフのストレスを軽減する為の簡単な手段としてかけはしメモリーの仕組みを使った実例を提示さえていただきましたが、次回は、主にイベントの「楽しさ」をサポートする手段としてのDXを中心に述べさせていただきます。