村でもできるDX -つちのこフェスタの事例-(クライアント:日本イベント企画株式会社様)
目次
全国各地から集うGWの夢、伝説の生物を探せ!
”つちのこフェスタ”というイベントをご存知でしょうか?岐阜県東白川村のつちのこの里で毎年ゴールデンウィークに1日だけ開催されるつちのこ探しのイベントです。一風変わったこのイベントは、毎年多くの人を惹きつけ、知る人ぞ知るGWを彩るひとつの風物詩となっています。
イベントの目玉はなんと言っても「つちのこを発見したら100万円」という大盤振る舞い。
1989年のスタートして以来、毎年日本全国から、沢山のつちのこハンターたちが東白川村に集い、伝説の生物「つちのこ」を捜索します。ですが、未だに発見には至らず、毎年1万円ずつ賞金がキャリーアップしていき、31回目となる今年は賞金が何と131万円となりました!
ここ数年は新型コロナウィルスの影響もあって開催が見送られた為、今年は久しぶりの開催となったわけですが、実はこのイベント、開催に反対する声も上がっていたのです。
2000人の村に1日で4000人の観光客!?
東白川村は、穏やかで魅力的な田舎の村です。下呂と中津川の丁度中間くらいに位置するこの村は、お茶の産地として有名な他、日本で唯一、「お寺のない村」つまり神道の村としても知られています。
東海北陸自動車道を降り、途中殆ど信号のない道をひたすら東に向かうと見えてくるのは、いかにもつちのこが出没しそうな平和な風景。
そんな場所で開催されるつちのこ探しのイベントは、年々、参加者が増加し、人口約2000人のこの村に、最大で4000人もの観光客が訪れる一大イベントとなりました。しかし、その一方、人の増加に伴い、問題も浮き彫りになっていったのです。
①駐車場が不足で、周辺道路が違法駐車で大渋滞
②参加数をコントロールできず受付は大混乱、参加券・食数が圧倒的に不足
③クレームと運営業務の多忙さでスタッフが疲弊
これらはまさに、オーバーツーリズムの典型的な課題です。こうした状況を放置すると、長年にわたり築いてきたイベントの評判や地域のイメージを損ねる恐れもあります。このままイベントを続けるべきか、それともここで終わりにするべきか、つちのこフェスタは、大きな決断を迫られていました。
イベントの運営方法を再構築
そこで、東白川村様が弊社のパートナー会社である日本イベント企画株式会社様に相談を持ち掛けて従来の受付方法を見直すことになり、日本イベント企画株式会社様と株式会社かけはしがイベントの効率化、高付加価値化のために共同開発したシステムを活用して、つちのこフェスタの受付システムを構築することになりました。
日本イベント企画様とは、以前からソフトピアジャパンのDX推進コンソーシアムなどで、何度かアライアンスを組ませていただいたことがあり、先方から日本イベント企画様に打診があったこともあり、以前構築したイベント運営の仕組みを使って課題を解決できないかと、方法を探ることになりました。そこで構築されたのが今回紹介する事例です。
具体的には、事前の参加登録と駐車場の予約をオンラインで行い、当日はスマホに表示されたバーコードをスキャンすることで、混雑していて長蛇の列ができていた受付や渋滞していた駐車場への入場がスムーズに行えるようにしました。以下が実際の画面です。
この仕組みの導入により、スマホ上のマイページで生成されたバーコードが入場パスポート代わりとなり、当日受付と駐車場の案内・入場がわずかな時間で対応できるようになりました。
受付や駐車場への混乱が大幅に緩和された結果、人手不足が解消、違法駐車による渋滞が解消され、さらにはクレームも一切発生しないという、これまでにない成果を達成することができ、村長をはじめとする地域の皆さんからも感謝の言葉をいただきました。
これは、IT企業とイベント運営会社が手を組み、デジタル変革を通じて地域の問題を解決した好例といえます。
新たな試み。デジタルな付加価値生まれる継続的な関係
更に当日は受付だけでなく、デジタルの強みを生かした今風のイベントも行われました。弊社の観光周遊の仕組みを利用した、スタンプラリーおよびデジタルくじの導入です。
駐車場から村に至るまでの道のりや会場にちりばめられたQRコードを読み取ると、スタンプが押されます。押されたスタンプが開くと、子供たちの描いたつちのこの絵が現れるという仕組みです。5つずつ集めるたびにマイページにデジタル抽選券が表示され、一定確率で商品が当たります。
スタンプをして子供たちの描いた「つちのこ」をゲット
5つスタンプするごとにもらえる抽選券。タップすると一定確率で景品が当たる。景品は、金銀銅の3種
また、1つスタンプするたびに、10UMAずつポイントがもらえ、ランクアップするという仕組みも導入しました。単純なゲームですが、皆、夢中になってQRコードを探しておりました。
ポイントを集めてランクアップ!称号は来年以降も持ち越し!
大人も子供も夢中で”デジタルつちのこ”探し
※観光周遊の仕組みについて、詳しい内容を知りたい方は、こちらからご覧いただけます。これらは関ケ原ファンクラブなどでも使われている仕組みです。
イベントの効率化と合わせて新しいイベントの試みも
新しいイベントも生まれました。東白川村の特産品である東濃檜を活用した、縦横それぞれ30mにもなる巨大な木チップのプールで、つちのこの焼印を押した木チップを探す「つちのこ宝さがし」というイベントコンテンツです。地域の産業を生かしたコンテンツであり、お子さんから大人まで夢中になって楽しまれてました。
煩雑な単純作業を効率化すれば、イベント運営にも余力が生まれ、その余力を利用して、様々な試みが行えます。新たな「楽しさ」を生み出すサイクルが生まれれば、より楽しいコンテンツを生み出すことも可能で、それがまた新しい地域の価値を生み出す力と繋がります。勿論システム会社だけでは、このサイクルは生み出せません。様々な方の助力が必要です。
適材適所、各自が余力を持って物事に臨める時間を生み出す事。これこそが弊社が長年目指してきたものでもあるのです。
豊かな時間の創出
弊社が目指すものは、「豊かな時間の創出」です。これは企業理念の中にもある大きな課題であり、常に考え続けている大きなゴールとも言えます。その意味では、今回携わらせていただいた事例は、ひとつの到達点だとも考えております。
企業理念 – 株式会社かけはし (kakehashi-services.com)
長年、人口減少が社会問題となり、人手不足は地方が抱える共通課題として認識されて久しいものの、本当に必要な地方においてデジタル化や業務効率化がなかなか進展しない状況が続いています。
何故でしょうか?それは難しく考えすぎているからです。今や誰もがスマホを持っている時代です。DXを行う為のツールは既に各個人の手元に揃っております。あとは如何にそれを活用するのかが問題であり、QRコードやバーコードを使えば、それほど大きな投資をすることなく、この事例のように小さな村でも充分にDXを行うことは可能です。
ただ、問題はその先です。何故DXを行うのでしょうか?それは誰もがゆとりをもって生きる為でもあります。その為には時間が必要であり、ITにはその時間を作り出す力があると考えております。
デジタル技術の導入に成功すると、最初は誰でもその利便性に驚き、そしてそれに頼りがちになります。弊社観光周遊の仕組みはそうやって生まれました。ただし、その余った時間を実り豊かなものにするのは、デジタル技術だけではかないません。その先にあるのが、文化であり、地方性であり、それを育んできた風土そのものです。
効率化の先にあるもの。その豊かで実りのある時間を創出することが弊社の目指すものなのです。
弊社の理念を理解し、パートナーとしてお声をかけてくださった日本イベント企画株式会社様には大変感謝しております。弊社は今後も、ITを使いながら、様々な方々との「かけはし」となるべく、共に悩み、努力してまいります。ご興味のある方や、弊社と共に地方や観光の在り方を作り上げていきたいと思われる会社様がおられましたら、是非お問い合わせください。